「ていうか私のどこが好きなの」

 黄田みなみはお弁当のかぼちゃの煮物を吹き出した。

「聖ちゃん?」

 対する聖はカロリーメイトを食べながら、汚い、と一蹴する。あくまで冷静を装う聖の横顔を呆けるように見つめながら、みなみな頭をいそがしく動かしていた。

 聖ちゃんの?どこが、好きって?

 しばらく箸を顎に当てて考えたがこれといって答えはない。戸惑いながらも「全部かなあ」と答えると平手打ちがとんできた。ふざけないで、とがんばって凄みをきかせる様子がかわいくてついにやけてしまう。

「それにしてもなんで急に?おかぼのこと好きになったの?」

 茶化すつもりで言ったものの返事がなくうつむいている。

 あまりの荒唐無稽ぶりに怒ったのだろうか。ちょっとふざけすぎたかな、と反省して覗きこむと、聖は顔を真っ赤にしたまま固まっていた。

「ひ、聖ちゃん?」

 みなみが驚いて声をあげると、今度はカロリーメイトがとんできた。

「私が、こんなはず、ない!」

 そう叫んで立ち上がると、ぱたぱたと音をたてて駆け出してしまった。

 午後の柔らかい日差しのなか、踏みつけられたカロリーメイトが崩れていく。

byたくあん